発声恐怖の例

ニ十三歳男。

これも対人恐怖症の一種であるが、生来、恐怖心が強く、忿怒しやすい方である。

中学二年の頃、声変わりの時、自分のキイキイという声がきまり悪いと思うことから、人前を恐れるようになった。

学校で、読み方の順番が来た時など、声を出すことができず、先生から特別扱いにされたことがある。

また徴兵点呼の時など、自分の名を呼ばれるということにはなはだしい予期不安を起こして、呼ばれた時は全く夢中で、自分で返事したのかしなかったのか、覚えがないのである。

その他、対人恐怖症患者は、風邪を引きやすくて、多い時には、月に三回ばかりもあるとのことであるが、これは感冒ではなくて、神経症である。

対人恐怖症患者の希望は、高等学校入学であるけれども、この恐怖のためにいつも試験場で、精神混乱を起こしてしくじることが多いのである。

※参考文献:対人恐怖の治し方 森田正馬著