自分が作り出したもの

対人恐怖症(自己臭恐怖症)の克服日記六月十四日・・・自分が平気でいると、A氏の様子にも、少しも妙なところは見出せない。

時々鼻をクスクスやることもある。

嫌な顔をして、身体を私と反対の方に向けて仕事することもあるが、これが当たり前だ仕方がないと思うと、自分にも、こころのゆとりができてくるようだ。・・・

対人恐怖症(自己臭恐怖症)の克服日記六月十八日・・・先生のお話のうちで、一番感じたことは、私の考えていた悟ろうとすることが実は迷いに深入りすることであるということであった。

自分が、人から嫌われるということは持って生まれた身の不幸である。

いかに治療しても治らないとすれば、もはや嫌われるままに、その運命に忍従しなければならない。・・・

対人恐怖症(自己臭恐怖症)の克服日記六月十九日・・・朝のうちは、非常に好成績であったが、午後A氏とSとが、盛んに皮肉を言う。

涙が出るほど苦しかった。

いっそう会社をやめようかと思う。

しかし、生活のため、勤めていかなければならない。

悲惨な生活だ。

一日も早く、商人になったほうが良いと考えた。・・・

対人恐怖症(自己臭恐怖症)の克服日記六月二十日・・・私が、A氏に対してすまなく思うのは、決して自欺ではないと思う。

もしA氏の隣席が私でないならばA氏は、少しも不快な日を送らないで済むのだ。

ただ私は、最善の努力をして、皆の手助けをして、人一倍働いていくよりほか、仕方がない。

午後に、夏の手当がでたので、両親の家に寄り、父に商売でもさせてくれるように頼んだ。・・・

対人恐怖症(自己臭恐怖症)の克服日記六月二十一日・・・今日は努めて、A氏と雑談した。

私が話しかければ、A氏も、けっして避けようとはしない。

私が避けているのだといわれた先生のお言葉が思い出された。

私が話しかけるのは、A氏に、鉄面皮な奴だと思わせはしないかという考えも起こった。

これは私の心のヒネクレであろう。

明日から、努めて交際を求めることにしようと思った。・・・

対人恐怖症(自己臭恐怖症)の克服日記六月二十二日・・・朝から、A氏と話をするように努めた。

大変よく話ができる。

そのせいか自分も心持ちがよく、腋臭のことも気にならない。・・・帰りの電車の中では、腰をおろした。

両側の人が、盛んに気にするので、自分も気になる。

恥を公然にするということは、かなり苦しいことだ。・・・

対人恐怖症(自己臭恐怖症)の克服日記六月二十三日・・・今日は、電車でも会社でも大分嫌な顔をされた。

嫌な顔をされるのが、当たり前だと思っても、全く閉口して、席にいたたまれないようになる。

お茶を飲みに行った間に、皆が、私の悪口を言っているように思う。

この考えは、果たして正しいかどうかわからないが、皆の平常から見れば、きっと噂くらいは、確かだと思う。・・・

※参考文献:対人恐怖の治し方 森田正馬著