自分が意地っ張りということがわかるようになった

対人恐怖症(重症の赤面恐怖)の克服日記第五十五日:先生から、水差しを持って行くように命ぜられた。

その時に、炭入れに炭がなくなっているのが目について、これをいっしょに持って行こうとすると、先生から褒められた。

どんなに嬉しかったことだろう。

対人恐怖症(重症の赤面恐怖)の克服日記第六十四日:先生の診察をお聴きする。

後、茶の間で、私ども三人で、先生のお話を承る。

ご熱心な先生の一句一句は、今はつくづく有難く感じられる。

意地っ張りで、強情な自分であることを、先生からお聴きして、はじめて、なるほどとうなずかれる。

また皆さんの日記を拝見しても、よくわかるようになった。

対人恐怖症(重症の赤面恐怖)の克服日記第六十六日:今朝の先生のお話は、自分の現在にピッタリとあてはまり、どうして、こんなに人の心の底まで見抜く不思議な力があるかと思って、先生にお任せすることが、非常に力強く感じられると同時に、そうした先生が、こわいような気がした。

そのうちには、こんなお話もあった。

「多くの人は、人に好かれたい欲望のために、その人のためになるかならないか、することそのことについては、深くも考える暇もなく、いたずらに気を利かそうとするために、かえって「気が利いて間が抜ける」のである。

人に好かれるためには、まず利己をやめ、我を捨ててかからなければならない。

はじめのうちは、気が利かなくて、叱られたり、笑われたり、随分苦しい思いをしなくてはならないが、そこをジッとがまんして、ただその人のために、便利と有効とを考えて工夫していけば、必ず人に好かれるようになり、人間の真心というものの有難さも、わかってくるのである。」

対人恐怖症(重症の赤面恐怖)の克服日記第六十八日:今まで私は、まず第一にこの病気を治しておいて、それから仕事にかかろうとして、いたずらに病気にのみ執着し、全く廃人のようになっていた。

今では、そうした自分本位はやめて、病気は病気として、苦しいままに、事実の方に心が傾いて参り、仕事をしたい、という自分の欲望のままに進んでいく、という気持ちになったのは、全く先生の偉大な力の賜である。

対人恐怖症(重症の赤面恐怖)の克服日記第七十日:夜、先生、奥様、やすえさんと、私と四人で外出する。

先生と一緒だと思うと、ぐっとむねがつまって、きまりが悪いような、嬉しいような気がした。

桃の節句も近づいて、人形屋で心が引かされる。

やすえさんと二人で、先生から可愛い人形を買っていただいた。

夜業が済んで後に、嬉しくて、こっそりと開けて見た。

※参考文献:対人恐怖の治し方 森田正馬著