人間性の自然に従う

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記十六日:今日は房州へ来てから、一番具合の悪い日である。

午後、前田へ米搗きにいった。

顔が赤面。

人と上手く話が合わない。

神経の作用が遅鈍になった。

視点を朦朧とさせて、顔の筋肉をだらりとさせておくのが、良い気持ちだった。

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記に対する森田正馬の回答『日夜絶えず、自分の身体と心との微妙な変動を気にし、観測している。

ちょうど守銭奴が、日夜、金袋を出したり入れたりしているようである。

自己欲の最も盛んな現象である。』

力を入れると、だんだん気持ちがよくなった。日暮れ方、藁の運搬に行った。

労働に比例して、気分が明るくなってきた。

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記に対する森田正馬の回答『ただすることによってのみ、活気が出て、興味が起こる』

一作昨年来、夢を見ない日は、ほとんどありません。

この頃、あまり意味のある夢を見るのが、恐ろしくなりました。

どうしたらよいでしょう。

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記に対する森田正馬の回答『どうするには及ばない。

・・・読者に対して、ちょっと説明しておく。

この不親切のような答えは、いわゆる不問療法と称するものである。

全く聞き流しの態度で、対人恐怖症患者に拘泥させ、注意を向けさせない法である。

これは病症の程度と場合とにより、用いるものである。』

バイブルは、私に性欲は悪魔だと信じさせました。

「女を見て色情をおこすものは、心の中にすでに姦淫したるなり」ということは、いかに私を苦しめたことでしょう。

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記に対する森田正馬の回答『悪心をおこしてはならない、という事を強く表したに止まる。

すべて極端は極端に移る恐れがある。

中庸を得なければならない。

ただ欲念のために、けっして人を損なってはならない。

西洋でもインドでも、古来いろいろの禁欲主義があった。

これらの記録を見れば、人間知識の偏狭なことを知り、また、かの西洋の僧院の内情を見れば、その結果が、洪水の堤を決するようになることなどを知ることができる。

ピューリタンも駄目だ。

大杉(栄)流の自然恋愛も間違っている。

ただ自然に活動していれば、性欲も自然に制せられるのである。』

労働している間は、赤面恐怖はありませんが、床屋に行って鏡に向かうとか、汽車に乗るとかすれば、顔が火照ります。

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記に対する森田正馬の回答『火照るのも、赤面するのも、人の生理である。これを止めようとするのは、心臓の鼓動を随意にしようとするようなものである。

苦にすることに慣れれば、自然に苦にならないようになり、赤面しないようになる。

ただ直往すれば、意想外に容易である。』

私は来年は、必ず実業方面の学校へ行きます、と父に誓いました。

それはたんに、一時逃れの言葉に過ぎません。

あの時に、父の言に反したら、父は先生のところへも、房州へもやってくれなかったでしょう。

そうしたら、今頃私は、死んでいたかも知れません。

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記に対する森田正馬の回答『なかなか死ぬものではない。

生の欲の強いのが、神経質であるから。』

私は来年、再び学校へ出るのが恐ろしい。

対人恐怖症が恐ろしいのです。

生きているのが恐怖なのです。

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記に対する森田正馬の回答『必死必生は、ただに武道の秘訣だけではない。』

私が三文詩人にでもなって、実業の方面をやれという父の言葉にそむいたら、私は不孝者でしょうか。

対人恐怖症(赤面恐怖)の克服日記に対する森田正馬の回答『否、最も自己の向上に適当なものを選べばよい。

それが孝である。

しかしこれを選び得るものは神である。

否、思慮もあり、経験もあり、世を知り、人を知る長者である。

執着心を失ってはいけないが、いたずらに世を知らず、経験のない少年が、たんにその気分と空想とをもって選んだものは、実際には、少しも当てにならないものである。

例えば、はじめて東京見物に来た人が善導者なくしていずれを見物してよいかわからないように、あるいは何でも、浅草で活動写真を見れば目的を達することができると考えるようなものである。

君の将来の方針を定めるものは、君の志望と、父君の見解と、他の識者との相談の結果が、最も良知だろう。

己を信じ、人を信じ、長者を信じることのできぬ人は、神を信じられない人である。

文科も良かろうが、具体的、実際的学問ならば、神経質には間違いがない。

虚弱者は、よく医学を志望し、神経過敏者は、往々精神的な方面に走り、宗教に傾くが、みな不適当である。

虚弱者は、農業によって身体強壮となり、神経過敏者は実験科学によって、はじめて人生の如実を会得することができる。

※参考文献:対人恐怖の治し方 森田正馬著