“人生を楽しめる人、楽しめない人”
あなたがもし、成功したら自分は受け入れられると思っているのなら、それはきっと、小さい頃母親が、あなたに成功することを期待したからだろう。
しかし、成功したからといってうけいれられるというものでもない。
もともと、自分の子どもに成功することばかり期待している親に、他人を受け容れる能力などないのである。
成功すればちやほやしてくれるけど、しっぱいすれば厄介者扱いされる。つまり、実際のあなたは受け入れられていない。実際の自分が受け入れられなくて、成功した自分が受け入れられている以上、常に成功していなければならない。
なんとストレスにまみれた生涯であろうか。
これでは対人恐怖症になってもおかしくはない。
自分の子どもに成功を強く期待する母親は、本人が誰よりも成功への強い憧れを持っているのである。
自分が成功したら喜び、自分が失敗したら悲嘆にくれる。
そして、絶えず成功しなければいけないように感じている。
しかし、世の中にはそんな人ばかりではない。
成功したら成功を喜び、成功できなければ、できないで、それなりの人生を楽しんでいる人もたくさんいる。
就職シーズンになると、学生たちのストレスの違いに驚かされる。
ある学生は、有名企業に入れなかったら自殺しかねないほど緊張している。
対人恐怖症的である。
しかし、ある学生は、就職できるところならどこでも自分に適したところであると、余裕を持っている。
そして、結果的には余裕を持っている人の方が力を発揮する。
ある人は世の中を責め、人生を嘆き、有名企業に入れなければ、今まで苦労して勉強してきた甲斐がないと青くなっている。
ところがある人は、「大きな企業に就職できなければ、近所の花屋につとめてもいいわ」と、有名企業に固執せずにのんびりしている。
そして結果的には、どこで働いても自分は楽しくやれると言っていた人が、就職にさいして十分に力を発揮できる。
おそらくこのような人は、母親になっても、息子に成功への大きな期待をかけるようなことはしないであろう。
そして、このような母親に育てられた息子は、他人と会っても対人恐怖症的な不安な緊張にさらされることはないはずである。
息子に過大な期待をかける母親は、強い競争心をもつ。
強い競争心をもちながら、息子を愛する。
愛するが、深い感情の交流はない。
息子に期待をかけ、依存しながらも、息子に不信感を持っている。
息子は息子で、母親の成功への期待を重荷に感じながらも、保護を得ようと母親に迎合する。
そして、迎合しながらも母親に不信感を持つということになってしまう。
対人恐怖症を克服するには失敗してもかまわないという心を持つことである。
※参考文献:気が軽くなる生き方 加藤諦三著