“罪の意識”

さて視線恐怖の4つの特徴を症状変遷のなかに位置付けてとらえてみると、これらが互いに関連し合っているのをおぼろげながらも理解しうるであろう。

まず自分の恥辱がさらしものにされているという被害者意識。
ついでさらし者にする人達を見返そうとすれば、おのずと攻撃性をともなわざるをえず、その結果による加害者意識。そこに生じる罪の意識。

外面と内面の分離による仮面性。

もともと<表情恐怖>段階の仮面は防御の手段であったが、対人恐怖症患者は見返そうとしているうちに不可解な威力を発揮するようになり、自他ともに仮面を通して対峙しているうちに、ともに不可解さをふかめてゆく。
不可解な威力を仮面の裏に隠し持つ対人恐怖症患者の心には、うしろめたさの意識が深く定着し、その意識にたえずつきまとわれるため症状発生状況は拡散する。
その際、すべての対人恐怖症患者が自覚しているか否かはともかくとして、ときに患者自身が、自分は犯罪者だとか、自分がいるというだけでわるい、などとのべることに端的に示されているように、この四つの特徴の中核にあるのは、罪の意識である。

※参考文献:対人恐怖 内沼幸雄著