●自分のほんとうの気持ちに眼を向ける

”勇気をもって、まず踏み込む”

対人恐怖症の人は自分がもっとも恐れている焦点に眼をすえることができず、そのまわりをぐるぐるとまわっているような真似をしていたのでは、いつになっても、不安な緊張から真に解放されることはない。

対人恐怖症の人はもっとも恐れている焦点に向かって、ずかっと踏み込む勇気こそ、本当の自分を解放するために必要なのである。
それができずに、他人を非難してみたり、自分より弱い立場の者にあたりちらしたりしてみても、結局は、生きることが基本的に怖くて仕方ないであろう。

対人恐怖症において、自己鍛錬法が失敗するのはこのためである。
肝心かなめの焦点から逃げているから、いかに自己を鍛錬してみても、対人恐怖症は治らないのである。

車のエンジンが壊れた時、車を動かすためにはどうしたらよいであろうか?ラジエーターの水を換えればよいのだろうか?
ワイパーの水を入れればよいのだろうか?
それともワックスで車体を磨けば奇跡が起こるのだろうか?

いくらワックスで車を磨いてみても、エンジンが故障している以上、車は動かない。
車を動かすためにはただ一つ、エンジンの故障をなおすことである。

ガソリンがきれて車が動かなくなったら、オイルを交換しても車は動かない。
車を動かすためにはガソリンを入れる以外にはない。

故障をなおすためには、故障したところをなおさなければならない。

赤面恐怖症の人のことを考えてみよう。
赤面するのがこわいという理由で、他人の前に出ることをさけているとどうなるか。

いよいよ自分の症状への恐怖心は増す。
恐怖にもとづく回避の行動は、恐怖心を増すだけである。

これは、アメリカの著名な心理学者、ジョージ・ウェインバーグが述べた、「行動は、背後にある動機を強化する」という基本原則の応用である。

逃げることによって挫折感を味わい、人前に出ることの恐怖心は増すだけである。

※参考文献:気が軽くなる生き方 加藤諦三著