同じストレスを受けても、個人の性格によって受け方が違うものなのでしょうか。
たとえば、転勤というストレスを受けた場合、ある人は、最初のうちこそ生活の変化、職場の変化のために強い不安を覚えたり、胃が重いというような状態に陥ったとしても、やがて環境に順応して身体も元に戻っていきます。
しかし、人によっては、いつまでも心身のマイナスの状態から抜け出せず、極端な場合は重症に陥り、いわゆるノイローゼになって、仕事ができなくなるという事態にたちいたります。
これはもう、個人の性格の問題であって、職場や家庭で「心の病」に悩む現代人のほとんどが、程度の差こそあれこうしたパターンを繰り返しているといえるでしょう。
たとえば、執着気質の人とか、同調性格の人は同じストレスを受けてもうつ病にかかりやすいようですし、片寄った性格の持ち主はストレスが重くなると耐え切れなくなり、いろいろな行動を起こします。
たとえば、爆発型の人は、カーッとなって一時的に乱暴をする可能性があります。
といっても、これは病気ではありません。
面倒なのはヒステリータイプの人です。
ヒステリーの発作を起こすのは序の口で、まだ扱いやすいのですが、困るのは、ほんの些細な症状なのに過大な症状を訴えて、病気に逃げ込むときです。
そのため、病気がますますこじれて治りにくくなる。
へたをすれば、救急車で運ぶような状態にもなりかねません。
こうしたタイプがある一方で、一つのストレスからまったく別な反応を起こす人達もいます。
あるとき、一人の男子学生が病院に訪ねてきました。
「中学のとき、数学の時間に何人か前に出て黒板で問題を解いたんです。
僕は途中で解けなくなりました。
すると、カーッと頭に血がのぼって、顔が赤くなった。
それだけならまだよかったんですが、ぼくだけ残ってしまったら、だれかが『あいつ、できないや、赤くなっている』と、いったんです。
僕は、ますます赤くなった。
それ以後は、人に顔を見られていると思うと、すぐ赤くなってしまうのです」
つまり、彼は人前で赤面することに悩み、学校にも行けなくなって病院を訪ねてきたわけです。
そして、彼に赤面恐怖のきっかけを与えたのは「教室の目」という社会的ストレスだったのです。
以後、彼はそれにこだわってしまったのです。
普通の人なら、赤面することはあっても精神科の医者を訪れるほどにはひどくなりません。
彼の場合、はじめは問題が解けないことが恥ずかしかったのに、次からは赤面することがはずかしくなったのです。
※参考文献:森田療法入門 長谷川和夫著