杉山さん(仮名)は、大手化粧品メーカーの某支店に勤めるサラリーマンです。
今日は年に1度、全国にある各支店の代表者が集まる全体会議の日。
200人以上が出席する大規模な会議で、各支社の売り上げや販売実績などが発表され、普段会うことのない本社の役員たちに叱咤激励されます。
杉山さんも支社代表として今回初めて出席します。
会場は緊張感が漂い、静まり返っています。
会議が始める前にトイレを済ませておこうと思った杉山さんは、トイレに向かいました。
ところがトイレで用を足そうとしたところ、ライバルとされる支店の代表者が隣に立ち、睨んできました。
居心地の悪さを感じた杉山さんでしたが、次の瞬間、体が硬直し、なぜかおしっこが出なくなってしまいました。
それからです。
杉山さんは隣に人が立つと排尿ができなくなってしまったのです。
おかげで人のいない時間をねらってトイレに行ったり、人が入ってこないようなトイレを探すなど、トイレに対してさまざまな制限ができてしまい、不便を強いられています。
これは男性に限定された症状です。
トイレが個室しかない女性には発症しません。
近くに他人がいると不安や緊張を感じて排尿できなくなるため、公衆トイレや職場のトイレなど、不特定多数が利用するトイレが苦手です。
ただし、人が誰もいなければ、公衆トイレでも問題なく用が足せます。
また、後ろに人が並んでいると「早く終わらせないと、迷惑をかけてしまう」と焦ってしまい、かえって出なくなります。
※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著