織物メーカー営業部の小池さん(仮名)は、配属以来、大手アパレルメーカーに営業をかけ続けています。
しかし担当者が多忙なため、なかなかうまくアポがとれません。
それでもあきらめずに営業をかけ続けていると、ある日、担当者の上司が会って話を聞いてくれることになりました。
意気揚々と出向いた小池さんですが、いざ担当者の上司と向かい合って名刺交換をするだんになって、自分の手が震えていることに気付きました。
「緊張するな、大丈夫」と自分に言い聞かせても、手の震えは治まりません。
それどころか、資料を渡す時、資料を指して説明するときなど、相手の視線が自分の手先に注がれているのではないかと思うと、恥かしいほど手が震えてしまうのです。
この時は、相手がえらい人だったので緊張してしまったのだろうと思った小池さんですが、以来、同じような場面になると「また震えたらどうしよう」と不安になり、相手が誰であろうと手が震えるようになってしまいました。
いまでは名刺交換が苦痛になり、営業マンとして失格だと思い悩んでいます。
振戦とは体の震えのことです。
振戦恐怖の人は、他人の視線が自分の手先にあるときに起こる手の震えに悩んでいます。
よくあるのが、お茶出しです。
客人にお茶を差し出すときに手が震えてしまいます。
「こぼさないように」「マナーは大丈夫か」などと考えれば考えるほど、震えは大きくなります。
その他、お酒の席でのお酌、高級レストランでの食事なども苦手です。
小池さんのように、名刺交換が苦痛な人も多くいます。
いずれも、だれでも多少は緊張する場面であり、ストレスや緊張から手が震えるのは何も特別なことではありません。
ところが、振戦恐怖の人は、状況に慣れて自然に震えが治まるということはなく、意識すればするほど逆に震えは大きくなってしまいます。
※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著