江藤くん(仮名)は入社6年目の会社員。
前に出るタイプではありませんが、穏やかな性格で同僚や部下から慕われ、上司からも信頼されていました。
ある日の昼休みの雑談で、暑気払いの飲み会を開こうという話になり、江藤くんと同僚のA子さんが幹事を務めることになりました。
入社当時からA子さんに対して「かわいいな」と好意を持っていた江藤くんは、一緒に幹事ができることを、ちょっと嬉しく思いました。
すると隣にいたB子さんに大きな声で「江藤くん、顔が赤くなっているよ!」と指摘されてしまったのです。
あまりの恥ずかしさで、耳まで真っ赤になっていくのを自覚しながら、なんとか冷静を装い、その場はやり過ごすことができたのですが、それ以来、赤面することをひどく意識するようになりました。
そして、「また顔が赤くなったらどうしよう。恥ずかしい」とだんだん人の前が怖くなっていき、人の集まる場所を避けるようになってしまったのです。
緊張したり、ストレスを感じたり、恥かしい思いをしたときは、誰でも顔や耳が赤くなったり、動悸がしたり、手に汗をかいたりします。
これは、交感神経が働いて起こる自然な現象です。
しかし、赤面恐怖の人は、顔が紅潮することを過剰に意識し、強く恥ずかしいことと感じてしまいます。
実際は過剰に顔が赤くなっていることもなく、周りの人も赤面していることに全く気付いていないような場合でも、本人は「顔が真っ赤になっている。どうしよう、笑われる」と不安に思います。
しだいに赤面すること自体が恐怖となり、大勢の人の前や、目上の人や異性の前に立つ場面など、赤面するような状況を回避するようになります。
発症は、症例のように、顔が赤くなったことを指摘された体験がきっかけになることが多いようです。
※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著