主婦の宇佐美さん(仮名)は、健康には人一倍気を使っています。
食材は、野菜なら国産有機野菜を選び、加工品も添加物や保存料を使用していない品物を選びます。
一日一万歩あるくことを心がけ、朝晩のストレッチも欠かしません。
そのおかげか、いままで大きな病気やケガをせずに過ごしてきました。
ただ最近、手が震えることに気付きました。
といっても、いつも震えているわけでもなく、いまのところ日常生活に支障がないため、「年のせいだろう。もう少しストレッチの時間を増やそうかな」と軽く考えていました。
ところが、旅行代理店を訪れたある日、申込用紙に名前や住所を記入しようとしたところ、激しく手が震えます。
震えを止めようと力を入れれば入れるほど震えは激しくなるばかりで、どうにもなりません。
代理店の人も不審に思っているのではないかと思うと、居ても立ってもいられなくなり、この日は申込用紙を持って帰ることにしました。
以来、人前で字を書こうとすると手が震えてしまいます。
おかげで外出することが怖くなってしまいました。
社会生活を送っていると、人前で文字を書かなければならない場面というのが、意外と多くあります。
結婚式や葬式の受付での記帳はもちろん、買物で使ったクレジットカードのサイン、ホテルのフロントでの記帳、銀行窓口や役所などでの書類への記入などです。
人前で字を書く場合、誰でも多少は緊張します。
「字が下手だから嫌だな」「見られていると焦ってうまくかけなくなるな」などと感じる人も多いのではないでしょうか。
ところが対人恐怖症の人は、普通の人が感じる緊張の度合いを超え、文字を書こうとすると手が大きく震えてしまい、うまく書けなくなってしまうのです。
震えを意識すればするほど、抑え込もうと思えば思うほど、震えは大きくなり、ますます字が書けなくなります。
このような経験をすると、人前で字を書くことに恐怖を感じるようになり、さらに震えは強くなります。
※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著