専業主婦の椎名さん(仮名)は、ある日、友人と映画を観に行きました。
映画がいよいよ佳境に入ったころ、午前中からの上映だったため、少々お腹がすいていて、お腹がグーッと鳴ってしまいました。
普段からお腹が鳴るほうでしたが特に気にしたこともなく、今日も誰も気づいていないだろうと思っていたのですが、友人に「お腹すいたの?映画が終わったらランチに行こうね」と小声で声をかけられ、耳まで真っ赤になってしまいました。
以来、お腹が鳴らないか、気になってしかたがありません。
今までのように気にしなければいいと思っても、また恥ずかしい思いをするのではないかと不安になります。
だんだん静かな場所が苦手になり、友人との外出を避けるようになってしまいました。
お腹が鳴ってしまうのは生理現象であり、仕方のないことです。
しかし腹鳴恐怖の人は、まだお腹が鳴っていなくても「お腹がなったらどうしよう」「周りの人に笑われてしまう」という思いにとらわれ、不安や緊張を感じます。
そのため、たいしてお腹がすいていなくても、出かける前には何かを食べてお腹が満たされた状態にしておく習慣があったり、すぐに空腹を紛らわすことができるように食べ物をかばんに常備する人も多くいます。
ですが、それでも「鳴ったらどうしよう」という不安は消えません。
特に苦手なのが、大勢の人が集まった静かな場所です。
例えば、映画館や講演会、特にクラシックコンサートのような、静かで緊張感の漂う場所は恐怖すら感じるようになり、避けるようになります。
※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著