コンビニでアルバイトをする佐藤さんは、子どものころから緊張しやすい体質で、授業で当てられたり、人前に出て発表したりすると、緊張から汗が出てきて声が震えることを自覚していました。

それでも学生時代はなんとか乗り切りました。

しかし、アルバイトを始めると、上司に指示されたり軽く注意されるだけで、自分でも驚くほどの汗をかくようになりました。

特に、客からのクレームをつけられたときは、ボタボタと落ちるほどの尋常ではない量の汗をかいてしまいます。

しだいに接客するだけで汗をかくようになり、おつりの紙幣が汗で湿ってしまうほどでした。

汗をかいている姿も、服が汗で濡れている姿も、人に見られることが恥ずかしくてしかたがありません。

しかし、意識すればするほど汗は噴き出してしまい、どうしようもありません。

次第に人と接すること、外出することが怖くなり、引きこもりがちになってしまいました。

スピーチ恐怖や電話恐怖、対人恐怖症など、どの恐怖でも緊張や不安によって発汗することがあります。

しかし発汗恐怖は、何かに恐怖を感じて汗をかくのではなく、自分が汗をかくこと自体に恐怖を感じる症状です。

周りから見たらたいして緊張するような場面ではなくても、大量の汗をかいてしまいます。

汗はハンカチではぬぐいきれないほどの量です。

「どうしよう。異常だと思われる」「恥ずかしい」などと考えれば考えるほど、緊張やストレスは高まり、汗は止まらなくなってしまうのです。

※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著