女子高生の木下さん(仮名)は、幼い頃から人付き合いがうまく、中学に入学したときも、高校に入学した時も、入学式当日には友達を作り、クラスのみんなとすんなりと打ち解け、充実した日々を送ってきました。
当然、いじめとも無縁でした。
高校3年生のクラス替えで、仲の良い友達すべてと別々のクラスになってしまったときも、「また新しい友達を作ろう」と前向きに考えていました。
ところが、新しいクラスに入ってみると、なんだか自分が浮いているように感じます。
自分以外の人はすでにみんな仲が良く、友達の輪も出来上がっているように思え、自分の居場所がありません。
さらにみんな受験に向けて勉強を進めているため、頭も良さそうです。
どんどん委縮していく自分を意識すると、さらにクラスメイトとの付き合い方やコミュニケーションのとり方が分からなくなります。
「自分は周りからどう見られているのだろう」ということも気になってしかたありません。
だんだんクラスにいることが怖くなり、苦痛を感じるようになってしまいました。
対人恐怖症とは、人との接触に苦痛を感じる状態です。
木下さんのように、自分以外の人が仲良く見えて入り込むことができない、周りから浮いてしまうと感じるのは、よくある症状です。
軽い雑談にも返答できない、すれ違いのあいさつもできないなど、周りと何を話せばよいのか、どのように付き合ったらよいのか、声をかけられたら何と返せばよいのかなどといった、コミュニケーションのとり方が分からなくなり、ひどく思い悩みます。
また、他人の反応に敏感になり過ぎてしまい、相手の心を深読みして、落ち込んだり緊張したりします。
人との関わりそのものに強い苦痛を感じ、人と接触する場面に恐怖を感じるようになるため、家族や親友といったごく限られたコミュニティ以外との付き合いをできるだけ避けるようになりました。
※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著