神経質症状を起こし始めた時、その直接の動機を自覚する人としない人がある。

夜中に不安な夢を見てさめた時、動悸が高いのに気づいて心臓神経症になるとか、医師に血圧が高いといわれて脳溢血恐怖になるとか、特別な過労の後に頭痛を覚えその後頭重感がつづいている、試験勉強中不安のために眠れないことから慢性不眠症になるとか、教室で先生に尋ねられてうまく答えられず赤面して、友達からそれを冷かされてから対人恐怖症になったとか、動悸は人によってさまざまであるがこれをよく覚えている人もあるが、動悸を全く知らない人も多い。

動悸は日常ありふれたこともあるために特別の注意を引かないで忘れてしまう人が多いし、また症状の方にだけ気が向いてそれに気を取られて動機など省みるひまもなく、自分では何の動機もなく起こったと思う人も多いわけである。

※参考文献:対人恐怖の治し方 森田正馬著