物事が順調にいっているときは、神経質的になりにくいものであるが、不安な環境にあると内向的になり、物事を悪く悪く解釈しがちなことは誰でも経験することである。

たとえば学生が入学試験を控えている時など、不安になって種々のことが気になる。

平生、時として頭の重いことがあっても特別気にならないが、試験期にそんなことがあると、これでは思うように勉強できない、落第するかも知れないというような不安が強く起こり、頭重感に執着するようになるようなものである。

はじめて寄宿舎に入って不安な心境のあるときに対人恐怖症をおこすとか、税金に対する不安のために神経質症状を起こしたりする人もあり、境遇の急激な変化に順応し得ないで症状を起こす人がある。

そして一度神経質症状が固定すると、不安な境遇とはもう関係なくいつまでもつづくことになる。

たとえば試験期に読書困難を覚えて苦しんだ者が、入学してから後までも読者不能の強迫観念に悩み続けるという具合である。

※参考文献:対人恐怖の治し方 森田正馬著