死を求めていた

対人恐怖症(涜神恐怖、赤面恐怖)克服記第六信・・・お手紙の趣き、一言一句、私の胸にひびかないものはありませんでした。

そして、今までの自分の態度、心持ちが、誤っていたことを悟りました。

先生のいわゆる「心頭滅却の境地」に、一日も早く立ち至ろうと、不必要な交際をなし、カラ元気を出し、虚勢を張っていた自分は、全く間違っていました。

あたかも貧乏人が金持ちを羨むように、他人と自分とを比較して、世間を呪い、人を恨み、ひねくれた根性となって、ついには救われない深淵に陥ろうとしていました。

ご教訓のうち、特に痛切に感じられたのは「盲目が目明きに対抗するに及ばず、小胆者が、大胆者に競う必要はなく、ただ自分の持前を発揮せよ」とのお言葉でありました。

私は今後、静かに自分を守って、自分の境遇に甘んじ、自分自身となろうと思います。

私は、この悩みは、一時的病気であるとのみ思って、世の青年のように、快活に大胆になろうとしていました。

すなわち思想によって、事実を作ろうとしていたのであります。

私は、来る四月より、〇〇小学校へ奉職することに定まりました。

教師となれば、心をかきむしられるような苦しいことがあるだろう、と恐ろしくてたまりませんけれども、先生の尊いお言葉を守って、震えながらも、その恐怖に当面していこうと思います。

本当に弱いものの生きていくべき道をお教え下さいましたご恩は、忘れることができません。

先生のご返書を見る前までは、実際、絶望に陥り、死をさえも求めていたくらいです。

※参考文献:対人恐怖の治し方 森田正馬著