対人恐怖症(赤面恐怖)克服記録その後

対人恐怖症(赤面恐怖)克服記録翌年、三月初めの彼の手紙には「私は毎日、上野の図書館へ行きます。

赤面するが、先生の『堪えよ、突入せよ』をモットーとして、赤くなろうが、青くなろうが堪えます。

今では恐怖はありません。

終日勉強しますが、注意が心地よく集注してくれます。

知らずに一項を読むということは、一度もありません。

今気が付いたくらいです。

帰る途でも、自分には何か、良い素質があるんだ、と自信を着々掴みかかります。

いたずらに叫びを上げたり、大地を叩きつけても、決して大きな人間ではないと思います。

黙って笑いながら人々の間にかくれていても、大きな人間になれると思います。

・・・芸術家を熱望するものが、商科に入るのは、別に矛盾したことではありません。

この考えを掴むにいたったのは、全く先生のご助言によるところが多いのであります。

・・・学校が始まった時を想像すると、不安になります。

今日も電車で、隣へ美しい方に座られた時、心臓は馬に乗ったように、ドッドッドッと跳ね上がりました。

堪えます。

この苦痛に堪え抜ければ、どんな困難だって怖くない、と勇気が付いてきました。・・・」

とあった。

対人恐怖症(赤面恐怖)克服記録その後:患者は、三月末には、商科大学に上成績で入学した。

対人恐怖症(赤面恐怖)克服記録同年十月の彼の手紙には「・・・一学期は、かなり幸福に学校へ行きました。

成績は、全科目が皆、良になりました。

・・・ところが、今月のはじめに胃を悪くし、学校を一週間も休み、3.7キロも瘦せました。

さらに感冒で、ひどく発熱しました。

その後続いて頭が痛く、神経は一層過敏で、例の赤面恐怖が、また頭を上げてきました。

赤面することは、あるいは再発かも知れません。

しかし私は去年以来、じっと耐えて、嵐の通り過ぎるのを待つことを知りました。

去年では、電車、劇場、学校、会合などを考えると、頼りない戦慄が頭をかすめました。

今はそれが全然ありません。

去年と今とでは、心の置き場が、まるで変ってしまいました・・・。

※参考文献:対人恐怖の治し方 森田正馬著